緊張したときや就寝時に無意識に歯を食いしばってしまうことはないでしょうか。 食いしばりは、歯の欠損や虫歯、顎の痛みなどの症状を引き起こすことがあり、放っておくと体に大きな負担を与えるので注意が必要です。
今回の記事では、食いしばりの原因と対策法についてご紹介します。 食いしばりでお悩みの方や、自覚症状はないが口周りのトラブルを抱えている方は、ぜひご覧ください。
食いしばりでは体重の2倍程度の負荷がかかる
食いしばりとは、文字どおり歯を食いしばる癖のことです。
似たような言葉に歯ぎしりというものがありますが、歯ぎしりの場合は、歯をずらして摩擦音を鳴らす行為なので、食いしばりとは少し異なります。
ただ単に歯を食いしばるだけでは、体に悪影響が出ることはないと思うかもしれませんが、食いしばりによる体への負荷は非常に大きく、体に悪影響を与えます。
食事中に歯を食いしばるときにかかる負荷は60㎏程度です。 さらに、睡眠中に行う無意識の食いしばりでは、体重の2倍程度の大きな負荷がかかります。 このような大きな負荷が常習的かかれば、体に悪影響を及ぼすことは容易に想像できるでしょう。
食いしばりにより引き起こされる症状
長時間歯を強く食いしばると、歯に大きな負荷がかかります。 この負荷が蓄積することにより、歯が破損してしまうことがあります。また、歯の亀裂から知覚過敏を発症し、冷たいものが歯にしみるといった症状が表れる方もいます。
さらに、歯科で詰め物や被せ者をしている場合は、それらがすぐに傷んでダメになってしまいます。 食いしばりによる歯への物理的なダメージは、虫歯、歯周病といった病を引き起こすこともあります。
以上の症状は、すべて歯や歯茎に起こる症状ですが、食いしばりの影響は全身に伝わることも珍しくありません。
たとえば、歯をよく食いしばる人は、顎関節症を患うことがよくあります。
これは、歯を食いしばることによる負荷が顎にまでおよんだ結果と考えられます。また、口周りだけではなく、負荷が頭に伝って頭痛を引き起こしたり、首や肩を伝って肩こりを引き起こしたりすることもあります。
食いしばりの主な4つの原因
食いしばりの原因は、生活習慣によるものと、心的要因によるものなどが考えられます。以下で、よく挙げられる食いしばりの原因を4つご紹介します。
1. 食事の際に奥歯ばかりを使用する
奥歯ばかりを使用していると、奥歯にある筋肉が常に緊張した状態となり、食いしばることが癖になってしまいます。この癖は無意識に行われ、就寝中でも知らず知らずの内に歯を食いしばり、体に大きな負担を与えます。
奥歯ばかり使ってしまう原因は、柔らかいものばかり食べてしまう点にあります。
柔らかい食事を食べるときは、前歯を使って食材を噛み切る必要性がありません。そのため、前歯を使用することが少なくなり、奥歯で噛むことが習慣化します。その結果、食いしばりを日常的に行うようになってしまうのです。
2. 噛み合わせが悪い
噛み合わせの悪さが食いしばりの原因となることもよくあります。食いしばりを引き起こす噛み合わせには、「過蓋咬合」「反対咬合」「叢生(そうせい)」「開咬」の4つがあります。
過蓋咬合
上の前歯が前に出て下の前歯を覆っている状態のことを指します。この状態であると、前歯で食べ物を上手く噛み切ることができず、奥歯ばかり使うことになり、食いしばりを発症します。
反対咬合
過蓋咬合とは逆に、下の歯が前に出て噛み合わせが悪くなった状態です。これも過蓋咬合のときと同様、噛み合わせの悪さにより食いしばりが習慣化することがあります。
叢生(そうせい)
歯の向きが不均一で歯並びが悪い状態のことを指します。叢生になると、特定の歯だけを頻繁に使用してしまい、バランスが悪くなります。
開咬
噛み合わせたときに前歯同士がくっつかずに開いた状態です。この状態であると、前歯で噛み切ることができないため、奥歯をよく使うようになり、食いしばりを引き起こしてしまいます。
3. 不安やストレスを抱えている
不安やストレスを感じると、無意識に歯を食いしばってしまうことがあります。この無意識に行う食いしばりが習慣化すると、何かに夢中になっているときや睡眠中でも食いしばりをしてしまうようになります。
4. 口腔内にある金属が合っていない
歯科手術で、歯に金属を埋め込まれることはよくありますが、この口腔内にある金属が体質に合わず、自然と食いしばってしまうといったケースも存在します。
食いしばりを防ぐ4つの対策法
ここでは、具体的な食いしばりの対策法をご紹介します。
1. 無意識に起こる体の緊張をほぐすトレーニングをする
食いしばりは、無意識に筋肉が緊張することが原因なので、この無意識に起こる体の緊張をほぐせば、改善することがあります。
緊張をほぐす方法の一つにストレッチがあります。ストレッチでは、首や肩、腰の筋肉をほぐします。
やり方はとても簡単で、天井に向かって手を上げて緊張状態にし、そこから一気に脱力状態にするだけです。仕事の休憩時間などに取り入れてみるとよいでしょう。
2. 日頃から上下の歯を接触させないようにする
一般に、1日のうちで上下の歯が接触している時間は15~20分であるとされています。
しかし、食いしばるのが癖になっている人の場合、長時間上下の歯が接触した状態となっており、これが歯や全身にダメージを与えます。
そこで、唇を閉じたときに上下の歯が接触しないように意識的に離すようにすると、食いしばりによる体への負担を減らせます。
3. 自律訓練により気分をリラックスさせる
自律訓練を行えば、体の緊張が解けて、食いしばりの改善に繋がります。 自律訓練は、くつろいでリラックスしているときや、睡眠前に行うと効果的です。
やり方としては、まず初めに薄暗い部屋の中でリラックスした態勢になり、4~5回腹式呼吸を行います。 腹式呼吸で気持ちを落ち着けたら、今度は心の中で4~5回程度「気分が落ち着いている」と呟きます。
そして、利き手に意識を集中させ、「利き手が重く感じる」と4~5回心の中で呟きます。
この「重く感じる」という呟きをもう片方の手、左右の足に対しても行いましょう。両手両足で暗示を唱えた後に、再び「気分が落ち着いている」と4~5回呟きます。
そして今度は、利き手が温かくなると心の中で呟き、これも両手両足に対して行います。こうすることで、リラックスした気持ちになり、体の緊張がほぐれてくるはずです。
もちろん、睡眠前に行う場合は、そのまま眠りについても構いません。
4. スプリントを着用して就寝中の食いしばりを抑える
スプリント療法は、自分の歯型に合わせて作られたゴム製のスプリントを着用して食いしばりを抑える治療法です。 スプリントは基本的に就寝中に着用するものです。
なお、昼間でも着用できる食いしばり治療のためのマウスピースもあります。 スプリントやマウスピースの作製は歯科クリニックなどで行っています。
体の不調の原因は食いしばりの可能性も!歯医者へ相談を
食いしばりの原因と対策法についてご紹介しました。
食いしばりは、自覚症状がない場合もあり、体の不調が実は食いしばりによるものだったというケースも多々あります。
たとえば、虫歯や歯周病になりやすい、口を開くと痛みがある、肩こりや首コリに悩まされている、なかなか寝付けないといったお悩みを抱えている方は、食いしばりが原因である可能性があります。 口周りと全身の不調を抱えている方は、食いしばりを疑い、お近くの歯科医にご相談してみてはいかがでしょうか。
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