歯周病は全身疾患につながる?罹患率と予防法


口腔内の病気は虫歯や歯周病だけでなく、顎関節症や口内炎、口腔粘膜疾患等さまざまあります。その中で歯周病は世界で最も罹患数の多い口腔疾患として、ギネス世界記録にも記載されています。

日本人の口腔疾患罹患動向

歯周病は世界でも罹患数の多い病気ですが、日本では成人の8割の人がかかっていると言われており、とても身近な口腔疾患です。
歯周病には段階がありそのうち重症に該当する罹患数は全体の7%で、人数にすると約5000万人にも及ぶと言われています。日本人の多くは歯が痛くなった時だけ歯医者さんへ行くといった人が多く、歯周病や予防で行く人が少ないため、罹患数が年々増えています。このままでは80歳で17本程度の歯を失うとも言われており、もっと予防に対する意識を持ってもらうために歯医者さんでは予防を進めるところも増えています。
平成23年に行われた歯科疾患実態調査によると、歯科の先進国であるスウェーデンでは80歳時点で残る歯の残存数が平均25本に対し日本は10.6本と、半分以下の結果となっています。スウェーデンは予防診療も保険適用になっている等、歯の予防に対し積極的な国です。この数字を見ると予防がいかに大切かを知ることができます。

歯周病と全身疾患の関係

歯周病は放置しておくと口腔内だけでなく、全身の健康状態を脅かします。その逆に、全身の疾患が影響して歯周病になることもあります。

糖尿病

歯周病は糖尿病の合併症とも捉えられています。糖尿病は高血糖状態が続く疾患です。糖尿病になっている人となっていない人では、なっている人の方が歯周病になる可能性が高いとされています。また、歯周病を治療すると歯茎の炎症が改善するためそれによりインスリンが動きやすくなり血糖値が改善することもあるため、歯周病を直すことで糖尿病の改善にも繋がるのです。

心臓疾患

心臓疾患は、歯周病の細菌が心臓の血管を詰まらせることで血管の細胞に影響を及ぼし、それが原因で起こる可能性がある疾患です。歯周病は口腔内にとどまらず、血液で全身や心臓にも巡るため注意が必要です。

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎は高齢者に多い病気です。高齢者になると咳反射や食べ物を飲み込む力が弱まるため唾液やプラークが気管に入りやすくなってしまい、それが原因で誤嚥を起こします。そうして取り込んだ歯周病原性細菌などの口腔細菌が、体内で炎症を起こす病気を誤嚥性肺炎と言います。日頃から口腔ケアを行い口腔細菌が減少すると、誤嚥性肺炎のリスクも下がります。

歯周病の予防方法

歯周病の予防は、自分で行うセルフ方法と歯医者さんに行って行う方法の二つがあります。

自宅でできる予防方法

既に歯周病になっている人は今のままの生活を続けていると治療を行ったとしてもまた同じように歯周病にかかってしまいます。そのため、生活習慣を見直すことが必要となります。歯を磨く際は単に磨くだけでなく、歯茎まで丁寧に磨きプラークを除去するようにしましょう。力を入れすぎると逆に歯茎を痛めてしまう可能性があるため、力加減が重要です。
そして、タバコを吸う人は吸わない人よりも歯周病に対する注意が必要です。発症率は吸わない人より吸う人の方が2から7倍高いと言われています。発症するリスクが高いだけでなく、タバコは症状を悪化させ治療効果を半減させてしまうこともあります。
また、歯はどのブラシでも磨くことはできますが、適切な選び方や持ち方というものがあります。毛はストレートで毛束が3列から4列のものは比較的磨きやすく、歯が健康的な人は普通か少し硬めなもの、歯茎が弱っている人は刺激の少ない柔らかめな歯ブラシがおすすめです。持ち方は鉛筆を持つ時のように持つと良いです。握ってしまうと余計な力が入り、歯茎を傷める原因となるため注意しましょう。歯ブラシが大きく磨きにくい人は毛の部分が小さい部分磨き専用の歯ブラシを使うと細かいところまで磨きやすいです。
食事する際は良く噛むことも大切です。早食いをしてしまうと食べる速度に対し、唾液の分泌が間に合わなくなってしまいます。唾液には歯垢を除去するための強力な殺菌作用があるため、唾液が多く分泌されていれば口腔環境を整えることができます。そのため、良く噛んで唾液を分泌させることが歯周病の予防に繋がるのです。また、唾液の分泌は口臭予防にもなります。

歯医者さんで行う予防方法

歯周病の症状には、3つの段階があります。
1段階目が歯肉炎です。歯茎が赤く腫れた状態で、歯茎を押すとブヨブヨしていたり、歯を磨く際に歯茎を刺激すると血が出る症状が現れます。2段階目が歯周病です。歯肉炎が進行し、歯茎が下がって歯が通常より長く見えてしまったり歯周炎を引き起こします。また、食べ物が歯に詰まりやすくもなります。3段階目が歯槽膿漏です。歯茎を押すと膿が出る状態で、歯がぐらぐらするようになります。硬いものを食べる際に痛みを感じたり、歯茎にかゆみが生じます。
1段階目であれば自宅で毎日行う歯磨きで症状を抑えることも可能ですが、2段階目以降は歯医者さんへ行って見てもらう必要があります。歯磨きを頑張っていても歯の奥や内側に溜まってしまったプラークを除去することは難しいため、歯の専門家である歯医者さんへ行ってクリーニングを行ってもらうと良いでしょう。専門の衛生士が隅々まで丁寧にクリーニングしてくれます。専用の機械を使って歯磨きでは落とせない汚れや歯石を除去するだけでなく、歯医者さんによっては歯磨きの適切な方法も教えてくれます。

歯周病は口腔内だけでなく、体全体の状態をも悪くする可能性のある病気です。安易に考えるのではなく、健康診断へ行くように歯も定期的に歯医者さんへ行って状態も確認してもらうと良いでしょう。

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